“ 今、水木しげるは戦後初めてラバウルを再訪した日のことを私に語っている。死んでいった戦友たち、生きのびた自分。
「戦友たちは、うまいものも食えずに若くして死んでいったんですよ。その戦地に立って、ああ、自分はこうして生きていると思うとですなぁ」
水木しげるは確信を込めて言った。
「そう思うとですなぁ、愉快になるんですよ」
私は遠慮なく笑い転げた。目から涙がほとばしった。笑いは止まらないままであった。
「ええ、あんた、愉快になるんですよ。生きとるんですよ、ええ。ラバウルに行ってみて、初めてわかりました」
これほど力強い生命賛歌を私は知らない。生きていることほど愉快なことがこの世にあろうか。歴史は死者で満ちている。しかし、自分は生きているのだ。なんと愉快なことだろう。
(呉智英『犬儒派だもの』より) ”
あなた疲れてるのよ: